投稿者: ok007
2016年大学入試問題・英語
2016年大学入試英語問題の独自分析
【分析 ~その1~】
北海道大学と東京外国語大学でYuval Noah Harariの”Sapiens: A Brief History of Humankind”の内容が出題されました。
北大「現代の都会暮らしは本当に幸せなのだろうか?Harariによれば狩猟採集民は自由だったってさぁ~」
外大「人間が特別な存在なんてほんの最近になってのことだよ。もしかしたらチンパンジーが今の人間の立場になってたかもよ。じゃぁ、何が一体人間だけをこんなに柔軟な集団を作れるようにしたんだろうね?答えは、imaginationさ!」
北大は「サピエンス」の内容を著者が引用する形、外大はハラーリのTEDでのプレゼンからの出題です。
2015年4月に発刊されたこの”Sapiens: A Brief History of Humankind”(知恵:人類の小史)という本、実は読みたいと思っていた本なのです。ハラリの驚くべき豊富な知識とその分析力は天才を感じさせます。
【分析 ~その2~】
東京大学、慶応大学薬学部、大阪市立大学でSteven Pinkerの文章がでました。
東大「言論って根源的に自由なものなんだ」→その根拠となる文を空所の段落に補充する問題。この文章は平明ですが、ピンカーらしく知性を感じさせます。やはり天才だなぁ。 free speech「言論の自由」,common knowledge「誰もが知っていること」,public information「情報公開」などのコロケーションはしっかりと理解させたいところです。少し高級な感じのmonstrous regimeなんて、まさに今の日本の政権にぴったりな表現ではないかと。
慶大「知識ってあればあるほどいいかもしれないけど、あえて合理的に無視することも必要さ」→問自体はあまり上手な設問ではないです。
市立大「おろかさって無知とか知能指数が低いことじゃないよ。自分が知ってることは他人も知っていると思い込んでしまうことさ。知っていることの呪いだね」→内容、設問ともにやや難しいと思います。
ちなみに、ピンカーに関してですが、勤務校で今年1月に高校3年生の特別編成授業の教材として、2014年に関西学院大学(ほぼ原文)と関西大学(平易に書き換えた箇所が多い)とで偶然ピンカーの同じ本の同じ個所を出題したので、関西大学の問をできるだけ原文に忠実に載せるという「ハイブリッド教材」を作って演習させました。解説まで加えておいたのですが、どれだけの生徒が興味を持ってくれたかはわかりません(汗)
68期生 英語第3回演習
(A) 次の英文の下線部①~⑩について,後の設問に対する答えとして最も適当なものをそれぞれA~Cから一つずつ選びなさい。
By the 1920s, it was thought that no corner of the earth suitable for humans to live in remained unexplored. ①New Guinea, the world’s second largest island, was no exception. The European missionaries, settlers, and administrators clung to its coastal lowlands, convinced that no one could live in the treacherous mountain range that ran in a solid line down the middle of the island. But the mountains visible from each coast in fact belonged to two ranges, not one, and between them was a mild plateau crossed by many fertile valleys.
A million Stone Age people lived in those highlands, isolated from the rest of the world for forty thousand years. ②The veil would not be lifted until gold was discovered in a branch of one of the main rivers. The ensuing gold rush attracted an Australian explorer, Michael Leahy, and businessman, who on May 26, 1930, set out to survey the mountains with his fellow companions and a group of indigenous lowland people hired as carriers. After scaling the heights, he was amazed to see grassy open country on the other side. (以下省略)
【解説】[言語獲得の謎]母語が思考を枠づける、とするサピア、ウォーフの言語決定論を実証的にしりぞけ、言語本能説の前提として、人は普遍的な心的言語で思考することをまず洞察する。さらに、文法のスーパールールが生得であること、その基本原理を幼児は母語に応用して言葉を獲得することを、最新の発達心理学等から確認する。 参考 「言語を生み出す本能(上・下)」 スティーブン・ピンカー著 椋田直子訳 1995 日本放送出版協会刊
【分析 ~その3~】
一橋大学では、大問2でピアニストで指揮者のダニエル・バレンボイムの友人で文学批評家の故エドワード・W・サイードとの音楽教育をもっと推進すべきだという講演を出題。毎年、最新の出版本から最新の話題の内容が出題されるので高度な内容とともに楽しみでもあるのですが、今年は大問1も、この大問2も平易な文章でした。音楽愛好家としては感動する内容です。いわく「音楽は異なる感覚を同時に体験できる。例えば寂しさと社交性が共存する」「音楽は人生を豊かにする」「音楽は調和経験として機能する」など、なかなか鋭い分析ではないでしょうか。
【分析 ~その4~】
東京工業大学と早稲田大学教育学部の大問1が同じ2015年5月のNational Geographicからの出題。まったく同じ素材で「イルカは現在地球上で、人間と異なる脳の著しい進化を遂げた哺乳類で、人間にはない能力を持っている」という内容。イルカの対話・コミュニケーンに学ぼう!みたいな。
【分析 ~その5~】
慶応義塾大学看護学部の大問Ⅵと九州大学後期日程の第1問がNorretranders,T.(2015).Altruismからの出題。まったく同じ素材で「利他主義」に関する内容です。「利他主義なんて考えはそろそろお払い箱(引退)だな。人間、他人あっての自分。他人が幸せであって自分も幸せになれる。だから、利他主義者になること自体が利他的ではないわけ。アマチュアのエゴイストとは違って、プロの(真の)エゴイストは分け与える。なぜなら、他人を助けることが自分の利益になっているからなんだね」。クー、なかなか厳しいご指摘!神戸大学前期日程の大問Ⅱでもaltruismに関して個体の利益と集団の利益という観点から考察した文が出題されました。
【分析 ~その6~】
ワード形式のファイルです。A4で29ページあります。
生活・進路
近年取材を受けた記事のレポジトリ
入学希望者学力評価テスト(仮称)=新センター試験実施へ向けて(2016年2月現在)
2020年度より現行のセンター試験は大学入学希望者学力評価テストに変更を検討中で、記述式問題イメージ(昨年12月22日)・マークシート式問題イメージ(本年2月16日)のたたき台が公開されました。
現時点での情報を私なりに整理してみました。間違っていたらばぜひご指摘ください。
「新センター試験」の特徴は次の5つ。
1.出題内容においては「教科型」に加えて、新たに「合教科・科目型」「総合型」の問題を組み合わせて出題
2.出題形式はマークシート式に「連動型複数選択問題」も加え、さらに、国語と数学で「条件付記述問題」を出題
3.評価は1点刻みではなく段階別評価
4.将来的にはCBT(Computer Based Testing)、IRT(Item Response Theory)によるテスト法も導入
5.英語については「4技能」を測定。外部試験を代替することも可(か、英語は全く実施しない?)
当初(3年前)の話と異なるのは
1.「複数回実施」が消えた
2.11月に記述、1月にマークの2本建てになる可能性大
さて、「新センター試験」に関して2月17日東京大学五神真総長名義で「高大接続システム改革についての意見」という意見書が提出されました。
ザックリかいつまんでみます。
1.東大はいままで行ってきた記述2次試験で、総合的多面的に、知識の詰め込みよりも知識の活用能力のある学生を選抜してきた。それは、主体的に学び、各分野で創造的役割を果たしていく学生の選抜という点でじゅうぶんに機能している。
2.東大の記述式試験が機能するためには、作問、採点において十分な能力を有する教員を一定数確保することはもとより、研究所を含む全学すべての部局の協力によって何とか成立している。
以上、東大に関しては「現行試験を変えるつもりはない。よって、現在東大が2次試験実施にあたり確保しているあらゆるリソースに手を付けてもらっては困る」ということでしょう。
3.新テストが、学んだ知識や技能を統合しながら問題の発見・解決に取り組むものへと改革する趣旨は賛成であるが、50万人以上が受験する記述式問題で、公平公正な採点を担保することは過去に世界でも例のない難題である。そのためには、膨大な人的財政的資源が必要であり、日本の教育全体へ不可逆な影響を与えることになるので、周到な用意が必要である。
4.新テストにおいて導入するICT技術は、社会システム改革の国家戦略としての視点も持つべきである。
5.また、現行のセンター試験は高度な公平性・公正性を保証する世界にも例のない試験として機能していることを過小評価してはならず、まず現行試験の改革をすぐに着手すべきである。同時に新システムの実施に向けじゅうぶんな予算確保を行う。特に、第五期科学技術基本計画や成長戦略と呼応した形で、集中的な研究開発を進めるべきである。
以上、新テスト導入については「新テスト、特に記述試験の導入実施を2020年と慌ててはいけない。現行テストを改良しつつも、国家戦略として人口知能やICT技術を十分研究しながら新テストの実施はすすめるべきだ」ということでしょう。
さて、東大総長の意見書がどのぐらい効力を発揮するのか、今後の展開に注目していきましょう。
世界の水道事情
1989年のイングランド・ウェールズの上下水道事業民営化を皮切りに、イギリスの水道水の9割、フランスでは8割近くが民営で供給されています。世界の水道事業は“水男爵(water baron)”と呼ばれる3つの会社(フランスのスエズおよびヴェオリア・エンバイロンメント、イギリスのテムズ・ウオーター・ユーティリティーズ)によって民営化=支配が進んでいます。日本でも、ヴェオリアが広島県と埼玉県の水循環センターの運営・管理を受注し、また愛媛県松山市では同社が水道事業を委託してから料金が2倍に跳ね上がりつつあるそうです。このように、いったん受注するとその会社が水道料金の値上げを繰り返します。いわば、水の管理を寡占することで世界の支配を狙うという構図を描くことができます。こうしたことによって、南米のボリビアでは水道料金の値上げに反対数する暴動まで起こり、2008年に公開された007シリーズ第22作 『慰めの報酬(Quantum of Solace)』はこの事件に基づいて映画化され、英米の情報機関、政府内の暗部が取り上げられています。さらにこれらの会社は世界銀行にも人を送り込み、じわじわと水による世界支配を進めていくかのごとくです。
アメリカではサンフランシスコに本社を置く総合建設業を営む多国籍企業ベクテル社が水産業に乗り出しました。政府高官(シュルツやワインズバーガーなど元国務長官)を経営者に据え、まさに政府と癒着状態です。
別の視点からの水問題は、外国資本による山林や水源の買収です。現在、中国資本は日本にダミー会社を立てて、実態がわからないようにしながら山林を買収しているようです。この問題はTPPとも深く関わっています。TPPの条項の中には、土地の売買権や水源の権利、鉱業採掘権なども、外国企業に対して自由化されるという項目が隠されています。ですから中国がTPPに参加しなくても、第3国をダミーとして使うことによって、日本の水源や森林を買収しようとすることはまず間違いないと思われます。
日本人一人当たり1日320リットルもの水を消費している現状を考えながら、日本における水のあり方について私たちはもっと学ぶ必要があります。
2016夏期講習(69期生)
難関大英語 第1日☆
難関大英語 第2日☆
難関大英語 第3日☆
難関大英語 第4日☆
難関大英語 第5日☆
第10問はハラーリがTED行ったプレゼンを原稿化したものです。
こちらのリンクからご覧ください(日本語の字幕つきで観られます)
難関大英語 第6日☆
☆ 解 答 ☆